相続税(相続税法)改正について知りたい人に向けて、この記事では相続税法とはそもそもどのような法律なのか、2022年の相続税改正の概要はどのようなもので、2023年の相続税改正はどのように行われる予定なのかについて詳しく紹介します。
そもそも相続税法とは?
そもそも相続税法は、相続税及び贈与税について規定をしている法律です。
1950年(昭和25年)3月31日に公布され、納税義務者や課税財産の範囲を法律内で明記しています。
また、相続税法は定期的に内容が改訂されているのも特徴で、時代に合わせて法律自体も変化していると言えるでしょう。
2022年の相続税改正の概要とは?
2022年の相続税改正の概要は、以下の通りです。
- 住宅取得等資金に係る贈与税非課税期間の延長
- 固定資産税等の負担調整措置
- 農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予
- 特定の美術品に係る相続税の納税猶予
- 非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予
住宅取得等資金に係る贈与税非課税期間の延長
2022年の相続税改正では、住宅取得等資金に係る贈与税非課税期間が延長されました。
具体的には、父母や祖父母など直系尊属から住宅購入・取得資金の贈与を受けたときに、一定の要件を満たせば贈与税が非課税になる特例措置である住宅資金贈与の非課税措置が2年延長され、耐震、省エネ又はバリアフリーの住宅用家屋であれば1000万、それ以外の住宅用家屋であれば500万まで非課税になります。
固定資産税等の負担調整措置
2022年の相続税改正では、固定資産税等の負担調整措置が実施されました。
固定資産税等の負担調整措置は、令和4年限りで実施されたもので、商業地等の令和4年度の課税標準額を、令和3年度の課税標準額に令和4年度の評価額の2.5%(現行は5%)を加算した額としたものです。
農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予
2022年の相続税改正では、農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予が設けられました。
農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予が設けられた背景には、農業経営基盤強化促進法が関係しています。
農業経営基盤強化促進法の概要は、以下の通りです。
この法律は、我が国農業が国民経済の発展と国民生活の安定に寄与していくためには、効率的かつ安定的な農業経営を育成し、これらの農業経営が農業生産の相当部分を担うような農業構造を確立することが重要であることにかんがみ、育成すべき効率的かつ安定的な農業経営の目標を明らかにするとともに、その目標に向けて農業経営の改善を計画的に進めようとする農業者に対する農用地の利用の集積、これらの農業者の経営管理の合理化その他の農業経営基盤の強化を促進するための措置を総合的に講ずることにより、農業の健全な発展に寄与することを目的とする。 農業経営基盤の強化を促進するための措置は、農用地の保有及び利用の現況及び将来の見通し、農用地を保有し、又は利用する者の農業経営に関する意向その他の農業経営に関する基本的条件を考慮し、かつ、農業者又は農業に関する団体が地域の農業の振興を図るためにする自主的な努力を助長することを旨として実施するものとする。 |
このような法律の背景もあり、農業を営んでいる人が農業用地を贈与した場合には、その贈与を受けた人に課税される贈与税が猶予されることになりました。
ただし、農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予を適用するには、贈与を受けた者が農業を営んでいる必要があります。
特定の美術品に係る相続税の納税猶予
2022年の相続税改正では、特定の美術品に係る相続税の納税猶予が設けられました。
学芸員の配置や資料の保管など、博物館として必要な条件を明記した博物館法が改正されることに伴い、審査基準等が見直された場合であっても不利益を被ることが無いように、特定の美術品に係る相続税の納税を猶予する制度のことです。
非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予
2022年の相続税改正では、非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予が設けられ、特例承継計画の提出期限が1年間延長されました。
非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の概要は、国税庁によると以下の通りです。
非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例等(「法人版事業承継税制」といいます。)には、租税特別措置法第70条の7の5の規定による措置(「特例措置」といいます。)と同法第70条の7の規定による措置(「一般措置」といいます。)の2つの制度があり、特例措置については、平成30年1月1日から令和9年12月31日までの10年間の制度とされています。 法人版事業承継税制は、後継者である受贈者が、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(「円滑法」といいます。)の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税の納付が免除される制度です。 |
2023年の相続税改正の概要とは?
2023年の相続税改正の概要は、以下の通りです。
- 相続時精算課税制度の改訂
- 生前贈与加算期間が7年間に
- 教育資金信託の非課税延長
- 結婚・子育て資金の非課税延長
- 医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度
相続時精算課税制度の改訂
2023年の相続税改正では、相続時精算課税制度の改訂が予定されています。
従来の相続時精算課税制度では、贈与額が2500万円までは非課税になる代わりに、相続時に相続財産に加算して相続税が課税される仕組みでした。
しかし、相続時精算課税制度の改訂で1年間の贈与総額が110万円を超えなければ、贈与税が課税されず、贈与税の申告も不要になりました。
生前贈与加算期間が7年間に
2023年の相続税改正では、生前贈与加算期間が7年間になりました。
現状は、3年以内に被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合は相続税の課税評価額に加算される仕組みですが、その期間が今後は過去7年間に延長されることになります。
教育資金信託の非課税延長
2023年の相続税改正では、教育資金信託の非課税期間が延長されました。
贈与者と贈与される者が直系尊属で、贈与される者の年齢が30歳未満の場合に、学校等に支払われる教育費」は最大1,500万円、「学校等以外に支払われる教育費」は最大500万円が非課税になる教育資金贈与の非課税期間が3年延長されます。
結婚・子育て資金の非課税延長
2023年の相続税改正では、結婚・子育て資金の非課税期間が延長されます。
結婚・子育て資金の非課税措置とは、直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合、1,000万円までは贈与税が非課税措置になる措置です。
この期間が2023年からは、2年延長されます。
医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度
2023年の相続税改正では、医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度が設けられました。
医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度等は、適用期限が3年3カ月延長されます。
2023年度税制改正の大綱
2023年度税制改正の大綱の概要は以下の通りです。
家計の資産を貯蓄から投資へと積極的に振り向け、資産所得倍増につなげるため、NISAの抜本的拡充・恒久化を行うとともに、スタートアップ・エコシステムを抜本的に強化するための税制上の措置を講ずる。また、より公平で中立的な税制の実現に向け、極めて高い水準の所得について最低限の負担を求める措置の導入、グローバル・ミニマム課税の導入及び資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築を行う。加えて、自動車重量税のエコカー減税や自動車税等の環境性能割等を見直す。租税特別措置については、それぞれの性質等に応じ適切な適用期限を設定する。 |
相続税について税理士に相談すべき理由とは?
相続税について税理士に相談すべき理由は、以下の通りです。
- 毎年のように細かい制度改訂がある
- 素人の場合申告漏れの可能性がある
- 節税についても指南してもらえる
毎年のように細かい制度改訂がある
相続税について税理士に相談すべき理由の一つに、毎年のように細かい制度改訂があるということが挙げられます。
相続税に関しては毎年のように細かい制度改訂があり、2022年にも改訂が行われましたが、2023年にも改訂が想定されています。
もちろん、これらの改訂によって直接影響を受けない可能性もありますが、相続税を申告する上では、これらの改訂情報を逐一確認して、最新情報をもとに相続税申告をしていくことが求められます。
このような背景から常に最新の情報を取得している税理士に依頼することで、結果的にスムーズに相続税申告までできる可能性が高いです。
素人の場合申告漏れの可能性がある
相続税について税理士に相談すべき理由の一つに、素人の場合申告漏れの可能性があるということが挙げられます。
相続税申告を自分で行う場合、本来納めなくてはいけない金額よりも過少に申告してしまう可能性があり、それだけではなく自分が本来課税対象であるにも関わらず、課税対象でないと判断をして、相続税申告自体を行わないケースもあります。
このような場合、過少申告加算税や延滞税などが本来納めなくてはいけない相続税にプラスされた状態で納税しなくてはいけません。
節税についても指南してもらえる
相続税について税理士に相談すべき理由の一つに、節税について指南してもらえるということが挙げられます。
財産を相続した時点で、税理士に相談するのも相続税額を抑える上でのポイントの一つではありますが、被相続人となる人が生存しているうちに税理士に相談することで、被相続人となる人が生きているうちにしかできない節税対策を指南してもらうことも可能です。
そのため、相続する財産の額が大きくなり相続税がかかることが想定される場合は、被相続人となる人が生きているうちから節税について税理士に相談するのが良いでしょう。
まとめ
相続は、相続専門の税理士に依頼することでスムーズに、そして適切に申告をすることが可能です。
相続税の申告・生前対策のご相談なら相続特化の提案型税理士事務所である「アスク税理士事務所」にご相談ください。