相続税の計算で使われる路線価とは?税務署の路線価否定についても紹介

相続税の算出で利用される路線価について知りたい人に向けて、この記事では路線価や路線価を調べる方法、それぞれの公的価格の違いについて紹介します。

路線価とは?

路線価とは、土地や不動産の価値を算出するために使われる指標になります。

土地や不動産は、現預金と異なり市場価値によって購入時の価値と時価が大きく異なります。

そのため、定量的に不動産や土地の価値を判断するのは難しいです。

また、個人の判断になると判断基準も曖昧になってしまうことが想定されます。

そこで作られたのが路線価です。

路線価は全国の道路を対象に価格をつけて、その道路に接する土地や不動産の価値を明確にするものです。

例えば、銀座と札幌では土地の価格が異なります。

そこで、土地の価格をなるべく正確に反映するために使われているのが路線価です。

市場価値の高い地域の路線価が高くなり、市場価値の低い土地の路線価が低くなります。

また、路線価が定められていない地域については、市区町村ごとの「評価倍率表」を見ることで評価額を知ることが可能です。

路線価を調べるためには?

路線価を調べるためには、以下の方法が挙げられます。

  • 国税庁のHP
  • 全国地価マップ
  • 税務署

路線価は、ホームページ等から自分で調べることも可能ですし、税務署で職員に代わりに路線価を調べてもらうこともできます。

それぞれの公的価格の違いとは?

それぞれの公的価格の概要は以下の4つです。

  1. 固定資産税評価額
  2. 実勢価格
  3. 公示地価
  4. 基準地価

固定資産税評価額

固定資産税評価額は、固定資産税の算出の基準となる評価額のことです。

固定資産税評価額は、3年に1度見直され、公示価格の70%の水準になるように調整されており、市区町村が公表しています。

固定資産税評価額は、相続税の課税額算定の際には使われず、不動産を売却する際の大まかな目安として使われることが多いです。

固定資産税評価額を知る際には、「課税明細書」を確認することで知ることができます。

「課税明細書」は、不動産を所有している人に対して市区町村から送付される通知書で、所有する不動産の固定資産税評価額も通知書内に記載されています。

それだけではなく、固定資産税台帳から固定資産税評価額を知ることも可能です。

固定資産税評価額は、自分が所有していない不動産であっても地域ごとに固定資産税評価額を知ることができるので、不動産の大まかな相場を知る際にも使われます。

実勢価格

実勢価格は、不動産を実際に売買する際に売買取引が成立する現実的な価格のことを指します。

時価とも言われるもので、需要と供給によって実勢価格は変わってくるのが特徴です。

特に、実勢価格は土地の評価だけではなく、不動産市場の影響も受けやすく景気が悪いとそれだけ不動産取引が控えめになるので、実勢価格も下落する傾向にあります。

公示地価

公示地価は、国土交通省が毎年3月に公表するその年1月1日時点における全国の標準地の土地価格を示したものです。

公示地価は、地価公示法という以下の法律により決められたものです。

第一条 この法律は、都市及びその周辺の地域等において、標準地を選定し、その正常な価格を公示することにより、一般の土地の取引価格に対して指標を与え、及び公共の利益となる事業の用に供する土地に対する適正な補償金の額の算定等に資し、もつて適正な地価の形成に寄与することを目的とする。
(土地の取引を行なう者の責務)
第一条の二 都市及びその周辺の地域等において、土地の取引を行なう者は、取引の対象土地に類似する利用価値を有すると認められる標準地について公示された価格を指標として取引を行なうよう努めなければならない。

公示地価は、不動産そのものの評価ではなく、不動産が立地する土地のみの評価を行います。

そのため、土地の上に建設されている建物の築年数などには関係なく、同じ地域内であれば公示地価は同じ価格です。

基準地価

基準地価とは、公示地価と異なり、各都道府県が公表している地価になります。

公示地価と地価と基準地価では、公表時期が異なるので公示地価と基準地価を比較することで、公示地価と基準地価の公表時期の間でどのように地価が推移したのかを知ることが可能です。

路線価から減額される要素とは?

路線価は、道路に接する土地に対して一律に決められた地価のことを指します。

しかし、現実的な運用をする上では同じ土地に接する土地であっても、斜面になっている土地と平坦な土地では使いやすさが異なります。

また、間口が狭い土地も使いにくく、路線価として一律に評価されることに不公平感が生じるのも事実です。

そこで、路線価には以下のような減額要素が設けられています。

  • 奥行価格補正率
  • 側方路線影響加算率
  • 二方路線影響加算率
  • 間口狭小補正率
  • 奥行長大補正率
  • 不整形地補正率
  • がけ地補正率

路線価否定判決とは?

路線価否定判決とは、路線価から算出した不動産評価額に応じて相続税を納付したところ、本来納めなくてはいけない税金を納めていないと判断された事例です。

日本経済新聞には、以下のように記載されています。

今回の訴訟では、こうした手法の在り方が争われた。
原告は、故人が銀行から融資を受けて購入した不動産の相続人。
一、二審判決によると、東京都内と神奈川県内のマンション計2棟を相続し、路線価に基づき財産を約3億3千万円と評価した。
銀行からの借り入れがあったことから、相続税額を「0円」と申告した。
一方、故人による購入価格は2棟で計13億8千万円に上っていた。
国税当局の不動産鑑定でも評価は計約12億7千万円で、国税当局は「路線価による評価は適当ではない」と判断。
約3億円の追徴課税をした。
原告側はこれを不服として課税処分の取り消しを求める訴えを起こした。
2019年8月の一審・東京地裁判決は国税側の勝訴とし、20年6月の二審・東京高裁判決も判断を維持した。
この日の上告審弁論で、原告側は「節税の意図があったとしても、路線価によらない評価手法を採るべき事情に当たらない」と主張。
路線価と実勢価格の隔たりが是正されていない現状にも触れ、「狙い撃ち的に特定の相続財産を、不動産鑑定によって評価することは平等な取り扱いに反する。
恣意的な課税は許されない」と述べた。
これに対し、国税側は「路線価と実勢価格の間に著しい開きがあり、対象となった不動産の客観的な価値を示していることに疑いがある」と指摘。
「路線価による評価手法を画一的に適用し、形式的な平等を貫くと、実質的な税負担の公平を著しく害することが明らかな特別な事情があった」として適法だと反論した。

路線価が否定された背景とは?

路線価が否定された背景は、以下の5つです。

  1. 被相続人の年齢が高く相続税対策として見られた
  2. 被相続人自身の物件購入ではない
  3. 相続直前に対象物件を購入している
  4. 相続直後に対象物件を売却している
  5. 対象物件と被相続人の所在地が離れている

被相続人の年齢が高く相続税対策として見られた

路線価が否定された背景の一つに、被相続人の年齢が高く相続税対策として見られたということが挙げられます。

本来であれば不動産を相続した場合の評価額の計算方法は、路線価を使って計算することになります。

ただし今回の場合は、相続が目的でありかつ相続の税対策という側面が強すぎたため路線価が否定されたと言えるでしょう。

この背景の一つに、被相続人の年齢が高く当該不動産を自分の死後、相続税を軽くするために購入したと判断されたことが挙げられます。

相続税を軽くするために亡くなる数年前に不動産などを購入する事例もありますが、あまりにも相続税対策としての側面が強すぎる場合は、不動産の購入自体が否定され、かつ相続税の控除対象として判断されない事例もあるということです。

被相続人自身の物件購入ではない

路線価が否定された背景の一つに、被相続人自身が物件を購入していないことが挙げられます。

今回問題になっている不動産は、被相続人が直接購入したものではなく被相続人の家族が購入した不動産で、被相続人名義のものであったという形になります。

この場合、被相続人が直接購入しているわけではないので相続税対策として見られるのが一般的でしょう。

相続直前に対象物件を購入している

路線価が否定された背景の一つに、相続直前に対象物件を購入しているということが挙げられます。

自分がいつ死亡するのか予期することは不可能なので、死亡する直前に不動産を購入することにより、自分の死後に相続をするケースは発生するでしょう。

一方、今回の場合は被相続人がなくなる直前に当該不動産が購入されているので、国税庁には当該不動産を相続のためだけに購入し、相続税の負担額を小さくすることが目的と判断されました。

相続直後に対象物件を売却している

路線価が否定された背景の一つに、相続直後に相続人が対象物件を売却していることが挙げられます。

不動産は、現預金で相続するよりも割安の評価額で相続をすることが可能です。

その結果、相続税の納付金額を小さく抑えることができます。

一方で、今回のように相続直後に対象物件を売却していると、被相続人による物件購入自体が相続目的であると判断される可能性が高いです。

対象物件と被相続人の所在地が離れている

路線価が否定された背景の一つに、対象物件と被相続人の所在地が離れていることが挙げられます。

今回の場合、対象物件と被相続人の所在地があまりにも離れていたため、そもそも不動産自体を購入することが目的になっている。

そして、それらの不動産を相続することで、相続税の評価額を減らすことが目的であると判断されました。 

まとめ

相続は、相続専門の税理士に依頼することでスムーズに、そして適切に申告をすることが可能です。

相続税の申告・生前対策のご相談なら相続特化の提案型税理士事務所である「アスク税理士事務所」にご相談ください。