相続登記を自分でしたい人に向けて、この記事では相続登記は自分でもできるのか、相続登記を自分で行うメリット、相続登記を自分で行うデメリットについて詳しく紹介します。
それでは、見ていきましょう。
相続登記は自分でもできる
結論から言うと、相続登記は自分でも行うことができ、専門家でないとできない業務ではありません。
実際に相続登記を自分で行っている相続人の方も多いです。
相続登記を自分で行う場合、専門家に依頼する料金がかからず相続登記ができるので、相続登記の料金自体を抑えれるのが大きな特徴です。
自分で相続登記を行う場合かかる費用は、書類を作成するための以下の費用のみになります。
- 被相続人の戸籍謄本:450円~750円
- 被相続人の住民票の除票:300円
- 法定相続人の戸籍謄本:450円
- 法定相続人の住民票:300円
- 法定相続人の印鑑証明書:300円
- 固定資産評価証明書:300円
相続登記を自分で行うメリットとは?
相続登記を自分で行うメリットは、以下の2つです。
- 相続登記の経験・知識を身につけられる
- お金をかけないで相続登記ができる
相続登記の経験・知識を身につけられる
相続登記を自分で行うメリットの一つに、相続登記の経験・知識を身に付けられるということが挙げられます。
相続人として相続登記をしたことがあれば、その後他のご家族の方が亡くなられた際にも自分で相続登記を行うことが可能です。
また、相続登記自体は知識や経験があったほうが後々有利になる場面も多く、相続登記に詳しいことで相続の際に困る機会も少なくなるでしょう。
そのような観点から、相続登記の経験や知識を実際に作業をする中に身に付けられるというのは、相続登記を自分で行うメリットの一つになります。
お金をかけないで相続登記ができる
相続登記を自分で行うメリットの一つに、お金をかけないで相続登記ができるということが挙げられます。
相続登記を司法書士に依頼する場合、10万円弱かかることが多いです。
また、相続関係が複雑な場合や相続人がはっきりしていない場合、相続人が誰なのかを明確にする作業が必要になり、追加で料金がかかるケースもあります。
その点、相続登記を自分で行う場合、書類発行の費用だけを払えばいいので1万円弱で相続登記を行うことも可能です。
このように、相続登記を自分で行うことで相続登記にかかる費用を抑えられるというのは、相続登記を自分で行うメリットになります。
相続登記を自分で行うデメリットとは?
相続登記を自分で行うデメリットは、以下の3つです。
- 記入漏れが発生する可能性が高い
- 労力・時間がかかる
- 権利が複雑で登記できないことがある
記入漏れが発生する可能性が高い
相続登記を自分で行うデメリットの一つに、記入漏れが発生しやすいということが挙げられます。
相続登記を自分で行うことで、知識がない素人が作成する書類なので、どうしても記入漏れや本来記載しなくてはいけない項目が抜けてしまう可能性もあります。
労力・時間がかかる
相続登記を自分で行うデメリットの一つに、労力・時間がかかるということが挙げられます。
相続登記についてわからないところがあれば法務局に出向いて相談をする必要があります。
それだけでなく、書類作成においても様々書類を集めなくてはならず、それらの書類を集めるだけでも労力がかかるでしょう。
また、実際に相続登記を行う際には書類を作成する必要があり、書類作成にも時間がかかることが想定されます。
このように相続登記を自分で行うことで労力や時間がかかってしまうというのは大きなデメリットでしょう。
権利が複雑で登記できないことがある
相続登記を自分で行うデメリットの一つに、権利が複雑な場合、素人では登記できない可能性があるということが挙げられます。
素人が相続登記を行う場合、どうしても複雑な相続登記になると対応しきれないことがあります。
例えば、祖父母が所有していた不動産を後から登記しようと思った場合、相続人が増えていることもあり、個人で相続人を探して相続登記をするのは難しいです。
そのほかにも、区分所有物件で管理会社がすでに倒産している場合、相続登記が複雑になる傾向があります。
このような場合、素人だと適切に相続登記をすることができず、登記できたと思っていても、うまく登記はできていなかったというケースにもなりかねません。
登記できない可能性を事前に排除するためにも、権利が複雑で登記が難しそうな場合は司法書士に相談のうえ、司法書士に依頼した方がスムーズに、そしてトラブルなく相続登記できる可能性が高いです。
相続登記を専門家に依頼すべきケースとは?
相続登記を専門家に依頼すべきケースは、以下のようなケースです。
- 時間を使って書類作成ができないケース
- 相続人が多いケース
時間を使って書類作成ができないケース
相続登記を専門家に依頼すべきケースの一つに、時間を使って書類作成ができないケースが挙げられます。
相続登記を自分で行う場合、相続登記について勉強しなくてはならず、その後書類を作成するための書類集めをする必要があります。
そして、書類を作成するためにも時間がかかるでしょう。
素人の場合、それぞれの工程でゼロから知識をつけて対応しなくてはならず、時間がかかってしまうケースも多いです。
そのため、時間を使って書類作成ができない場合は司法書士に依頼した方がいいでしょう。
相続人が多いケース
相続登記を専門家に依頼すべきケースの一つに、相続人が多いケースが挙げられます。
相続人が多い場合、相続関係が複雑になりやすいだけではなく、そもそも誰が相続人なのかが明確になっていないケースも多いです。
この場合、被相続人の戸籍謄本を調べた上で相続人にあたる人を明確にしていくことが必要になります。
また、相続登記に当たってはすべての相続人の合意が必要になるので、合意をとるために調停が必要になるケースも考えられるでしょう。
このような背景もあり、相続人が多い場合は司法書士に依頼した方が相続人が対応しなくてはいけない作業を減らすことができ、かつスムーズに相続登記できる可能性が高いです。
そもそも相続登記とは?
相続登記は法務局によると、正確には「相続による所有権登記」といい、相続による所有権移転登記」とは、土地や建物の所有者が亡くなった場合に、その土地や建物の名義を、亡くなった方から遺産を引き継いだ方(相続人)へ変更する手続のことを指すとされています。
また、相続登記自体は今までは義務ではありませんでしたが、不動産登記法が改正されたことに伴って、2024年4月から相続登記が義務化されることになりました。
義務化によって、相続登記は相続してから3年以内に行わなくてはいけないことになります。
また、義務化されたことで相続登記をしなかった場合の罰則も設けられ、相続登記を期限内に行わなかった場合、10万円以下の過料が科されます。
相続登記が義務化された背景とは?
相続登記が義務化された背景には、空き家問題が大きく関係しています。
空き家の数は年々増えてきており、所有者不明なため危険な状態であっても行政が処理できないこともあります。
実際に、平成30年住宅・土地統計調査では空き家数は848万9千戸で、全国の住宅の13.6%を占めているとされます。
実際に、法務省は「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」の改正理由を以下のように示しています。
日本では、相続登記がされないことなどにより、「所有者不明土地」が発生しています。所有者不明土地とは、「不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地」「所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地」のことをいいます*2。 所有者不明の土地が発生している背景として、①相続登記の申請は義務ではなく*3、登記手続きをしなくても不利益を被ることは少ないこと ②地方を中心に土地の所有意識の希薄化および土地を利用したいニーズの低下 ③遺産分割協議をしないまま相続が繰り返され、土地共有者がねずみ算式に増加する*4ことなどが挙げられています。 また、前記要因により所有者の探索に多大な時間と費用が必要となり、土地が管理されず放置され、共有者が多数あるいは一部所在不明の場合は、土地の管理・利用のために必要な合意形成が困難なことから、㋐公共事業や復旧・復興事業が円滑に進まないなど土地の利活用を阻害している ㋑土地が管理不全化し、隣接地への悪影響が発生するなどの問題点が挙げられています。 今後、高齢化の進展による死亡者数の増加等により、所有者不明土地問題はますます深刻化するおそれがあるため、同問題の解決は喫緊の課題であるとされ、本改正となりました。 |
相続土地国庫帰属制度について
相続登記を行う際には、相続土地国庫帰属制度についても理解することが重要です。
相続土地国庫帰属制度は、相続した土地の処理が相続人の間でできない場合、条件によっては相続した土地を国庫に帰属できる制度になります。
相続土地国庫帰属制度のポイントは、以下の通りとされています。
- 相続等によって、土地の所有権又は共有持分を取得した者等は、法務大臣に対して、その土地の所有権を国庫に帰属させることについて、承認を申請することができます。
- 法務大臣は、承認の審査をするために必要と判断したときは、その職員に調査をさせることができます。
- 法務大臣は、承認申請された土地が、通常の管理や処分をするよりも多くの費用や労力がかかる土地として法令に規定されたものに当たらないと判断したときは、土地の所有権の国庫への帰属について承認をします。
- 土地の所有権の国庫への帰属の承認を受けた方が、一定の負担金を国に納付した時点で、土地の所有権が国庫に帰属します。
ただし、相続土地国庫帰属制度では全ての土地の国庫帰属を認めている訳ではなく、以下の場合は国庫に帰属できません。
- 建物がある土地
- 担保権や使用収益権が設定されている土地
- 他人の利用が予定されている土地
- 土壌汚染されている土地
- 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
- 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
- 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
- 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
- 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
- その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
相続土地国庫帰属制度は、相続によって土地の所有権を取得した相続人が申請することができます。
ただし、土地が共有地であるときは、共有者全員で申請することが必要です。
まとめ
相続は、相続専門の税理士に依頼することでスムーズに、そして適切に申告をすることが可能です。
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