相続時の年金とは?未収年金は相続放棄しても受け取れる

相続時の年金の取扱いについて知りたい人に向けて、この記事では相続税等の課税対象になる年金受給権や相続時に受け取れる可能性がある年金、企業年金・個人年金は相続税の課税対象になるのかを詳しく紹介します。

それでは、見ていきましょう。

年金受給権とは?

年金受給権とは、年金を受け取る権利のことです。

年金の受給要件を満たす人には、全員に年金受給権があります。

また、年金受給権を相続することも可能です。

相続時に受け取れる可能性がある年金とは?

相続時に受け取れる可能性がある年金には、以下のものが挙げられます。

  • 遺族基礎年金
  • 寡婦年金
  • 死亡一時金
  • 遺族厚生年金

遺族基礎年金

相続時に受け取れる可能性がある年金に遺族基礎年金が挙げられます。

遺族基礎年金は、日本年金機構によると以下のいずれかの要件を満たしている場合に、受給することが可能です。

  1. 国民年金の被保険者である間に死亡したとき
  2. 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき
  3. 老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡したとき
  4. 老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

1および2の要件については、死亡日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。

ただし、死亡日が令和8年3月末日までのときは、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。

3および4の要件については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方に限ります。

遺族基礎年金の年金額は以下の通りです。

  • 子のある配偶者が受け取るとき:777,800円+子の加算額
  • 子が受け取るとき:777,800円+2人目以降の子の加算額(1人目および2人目の子の加算額各223,800円/3人目以降の子の加算額各74,600円)

寡婦年金

相続時に受け取れる可能性がある年金に寡婦年金が挙げられます。

寡婦年金の概要は、日本年金機構によると以下の通りです。

寡婦年金は、死亡日の前日において国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間および国民年金の保険料免除期間(※1)が10年以上(※2)ある夫が亡くなったときに、その夫と10年以上継続して婚姻関係(事実上の婚姻関係を含む)にあり、死亡当時にその夫に生計を維持されていた妻に対して、その妻が60歳から65歳になるまでの間支給されます。
年金額は、夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3の額です。

※亡くなった夫が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けたことがあるときは支給されません。
※妻が繰り上げ支給の老齢基礎年金を受けているときは支給されません。

死亡一時金

死亡一時金は、死亡日の前日において第1号被保険者として保険料を納めた月数(4分の3納付月数は4分の3月,半額納付月数は2分の1月,4分の1納付月数は4分の1月として計算)が36月以上ある方が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま亡くなった時、その方によって生計を同じくしていた遺族(1・配偶者、2・子、3・父母、4・孫、5・祖父母、6・兄弟姉妹の中で優先順位の高い方)に支給されます。

死亡一時金の額は、保険料を納めた月数に応じて120,000円~320,000円です。

付加保険料を納めた月数が36月以上ある場合は、8,500円が加算されます。

遺族が、遺族基礎年金の支給を受けられるときは支給されません。

寡婦年金を受けられる場合は、どちらか一方を選択します。

死亡一時金を受ける権利の時効は、死亡日の翌日から2年です。

遺族厚生年金

相続時に受け取れる可能性がある年金に遺族厚生年金が挙げられます。

遺族厚生年金の受給要件は、日本年金機構によると次の1から5のいずれかの要件を満たしている方が死亡したときに、遺族に遺族厚生年金が支給されるとされています。

  • 厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
  • 厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき
  • 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている方が死亡したとき
  • 老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき
  • 老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

1および2の要件については、死亡日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。

ただし、死亡日が令和8年3月末日までのときは、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。

4および5の要件については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方に限ります。

遺族厚生年金の年金額は、日本年金機構によると以下の通りです。

遺族厚生年金の年金額は、死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額となります。

なお、上記受給要件の1、2および3に基づく遺族厚生年金の場合、報酬比例部分の計算において、厚生年金の被保険者期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。

65歳以上で老齢厚生(退職共済)年金を受け取る権利がある方が、配偶者の死亡による遺族厚生年金を受け取るときは、「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」と「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と自身の老齢厚生(退職共済)年金の額の2分の1の額を合算した額」を比較し、高い方の額が遺族厚生年金の額となります。

未収年金は相続放棄しても受け取れる

未支給年金は、本来受け取れるはずの年金を受け取る権利のことを指します。

相続人が、被相続人の未支給年金を受け取れるのは、亡くなられた方が年金を受給していたときの未支給分もしくは、亡くなられた方が年金の受給資格を持っている未支給年金で、被相続人が請求手続きをしていなかった未支給分になります。

そして、未収年金は相続資産ではなく、あくまでも年金を受け取る権利なので、遺産の相続放棄をしている場合であっても、遺産相続できる権利がある場合は未支給分の請求をすることが可能です。

実際に、裁判所が公表する判例として以下のものがあります。

判示事項: 国民年金法(昭和六〇年法律第三四号による改正前のもの)に基づく年金の受給資格を有する者が国に対して未支給年金の支払を求める訴訟の係属中に死亡した場合における訴訟承継の成否

裁判要旨: 国民年金法(昭和六〇年法律第三四号による改正前のもの)に基づく年金の受給資格を有する者が国に対して未支給年金の支払を求める訴訟の係属中に死亡した場合には、右訴訟は当然に終了し、同法一九条一項所定の者がこれを承継するものではない。
国民年金法(昭和六〇年法律筆一四号による改正前のもの)一九条

参照法条: 国民年金法施行規則(昭和35年厚生省令第12号。昭和61年厚生省令第17号による改正前のもの)25条,民訴法208条

亡くなった方の年金を不正受給した際の罰則とは?

亡くなった方の年金を不正受給した際には、罰則が設けられており意図的に不正受給した場合は刑事罰に問われる可能性もあります。

亡くなった方の年金を不正受給した際には、詐欺罪に問われる可能性が高いです。

「詐欺罪」は、刑法第246条で定義されているもので、自分に権利がないにもかかわらず年金を不正受給をした場合にも適用されます。

また、年金受給者が亡くなった時点で死亡した旨を報告する必要があり、年金の受給停止処理を行う必要があります。

そのため、これらの報告をしなかった時点で取得金額に関係なく詐欺罪は成立すると考えられるでしょう。

詐欺罪は、10年以下の懲役が課される可能性があり、罰金刑ではなく懲役刑になります。

ただし、詐欺罪自体では罰金刑になることはありませんが、不正受給した金額については返還を求められます。

相続時に税理士に相談した方がいい理由とは?

相続時に税理士に相談した方がいい理由は、以下の3つです。

  1. お金周りの部分をまとめて相談できる
  2. 難しい部分の手続きを代行してもらえる
  3. 相続税の納付金額を抑えられる時がある

お金周りの部分をまとめて相談できる

相続時に税理士に相談した方がいい理由の一つに、お金周りをまとめて相談できることが挙げられます。

税理士には、相続税のことを相談することも可能です。

また、相続税だけではなく税金関連の部分で疑問点がある場合や相続した資産の運用方法などについて疑問がある場合なども、税理士に相談することで適切なアドバイスをもらえる可能性が高いです。

場合によっては人を、資産運用コンサルタントなどを紹介してもらえる可能性もあります。

難しい部分の手続きを代行してもらえる

相続時に税理士に相談した方がいい理由の一つに、税理士に相続税申告代行を依頼することで相続税申告の複雑な部分や理解した上で申請しなくてはいけない部分を代わりに税理士に行ってもらえるということが挙げられます。

相続税の申告自体は素人でも行うことができますが、どのように申告をすべきなのか、またどのように財産評価すべきなのかを自分で判断することが求められます。

そして、相続税申告におけるルールを正確に理解するためには時間もかかるでしょう。

その点、税理士に依頼すれば、相続人は相続税についての専門的な学習をしなくても相続税申告が正しく行えます。

相続税の納付金額を抑えられる時がある

相続時に税理士に相談した方がいい理由の一つに、相続税の納付金額を抑えられる可能性があることが挙げられます。

税理士に相談することで、特例の提案や節税対策を指南してくれ、相続税の納付金額を圧縮できる可能性が高いです。

まとめ

相続は、相続専門の税理士に依頼することでスムーズに、そして適切に申告をすることが可能です。

相続税の申告・生前対策のご相談なら相続特化の提案型税理士事務所である「アスク税理士事務所」にご相談ください。