遺産を孫に相続させたい人に向けて、この記事では遺産を孫に相続させる方法や孫に相続させたい場合に税理士に相談すべき理由、孫に相続させる際のデメリットについて紹介します。
それでは、見ていきましょう。
孫に相続させる方法とは?
孫に相続させる方法は、以下の方法が考えられます。
- 遺言書を作成する
- 養子縁組をする
- 生前贈与をする
- 教育資金の贈与をする
遺言書を作成する
孫に相続させる方法の一つに、遺言書を作成することが挙げられます。
遺言書を作成することで法定相続人ではない孫に対しても資産を相続させることができます。
遺言書を作成する際には、公正証書遺言書のほうが有効性が高いと認められる可能性が高いので、公正証書遺言書がおすすめです。
公正証書遺言書については、日本公証人連合会によると以下の通りです。
公正証書遺言は、遺言者本人が、公証人と証人2名の前で、遺言の内容を口頭で告げ、公証人が、それが遺言者の真意であることを確認した上、これを文章にまとめたものを、遺言者及び証人2名に読み聞かせ、又は閲覧させて、内容に間違いがないことを確認してもらって、遺言公正証書として作成します。 |
なお、民法では、「証人二人以上」と定められていますが、公証実務では、証人が3名以上になることはなく、証人2名で公正証書遺言が作成されます。
遺言者が遺言をする際には、どのような内容の遺言にしようかと思い悩むことも少なくないと思いますが、そのようなときも、公証人が、親身になって相談を受け、必要な助言をし、遺言者にとって、その意向に沿った最善と思われる遺言書を作成していくことになります。
費用がどの程度必要かについて御心配かもしれませんが、費用は、政令で定められており、相談は、全て無料となっています。
養子縁組をする
孫に相続させる方法の一つに、孫と養子縁組をするという方法が考えられます。
孫と養子縁組をすることで孫が法定相続人になるので、孫に対しても相続権が発生します。
そして、孫が養子になっている場合、他の法定相続人と同様の権利を有することになります。
ただし、養子縁組をする際には被相続人に子供がいる場合には一人のみ、被相続人に子供がいない場合でも二人しか養子縁組をすることができません。
孫と養子縁組をする場合、被相続人に子供がいることが前提になるので、複数人孫がいる場合であっても一人の孫としか養子縁組をすることができないのがデメリットと言えます。
生前贈与をする
孫に相続させる方法の一つに、生前贈与をすることが挙げられます。
生前贈与の中にも様々なものがありますが、一番ポピュラーなのは年間110万円まで非課税で贈与できる制度を使うことです。
年間110万円まで非課税で贈与することができ、贈与対象は法定相続人以外でも問題ありません。
そのため、孫に対して年間110万円までであれば非課税で贈与することが可能です。
また贈与税は支払うことで110万円以上であっても贈与することは可能です。
生前贈与については、国税庁によると具体的に以下の通りです。
贈与税は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。
したがって、1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません(この場合、贈与税の申告は不要です。)。
教育資金の贈与をする
孫に相続させる方法の一つに、教育資金として贈与をすることが挙げられます。
孫に対して贈与する際の目的が、教育資金としてであれば教育資金として1,500万円まで非課税で贈与することが可能です。
そのため、孫が海外の大学で学びたいなどの要望をもとに孫に対して贈与をしたいという目的なのであれば、教育資金としての贈与を利用することで、非課税枠を有効活用して贈与することが可能です。
教育資金としての贈与の制度については以下の通りです。
平成25年4月1日から令和5年3月31日までの間に、教育資金管理契約を締結する日において30歳未満の方(以下「受贈者」といいます。)が、教育資金に充てるため、金融機関等とのその教育資金管理契約に基づき、受贈者の直系尊属(父母や祖父母など。以下「贈与者」といいます。)から信託受益権を取得した場合、書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合または書面による贈与により取得した金銭等で証券会社等で有価証券を購入した場合には、その信託受益権または金銭等の価額のうち1,500万円までの金額に相当する部分の価額については、取扱金融機関の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出することにより、受贈者の贈与税が非課税となります(注1)。 (注1)信託受益権または金銭等を取得した日の属する年の前年分の受贈者の所得税に係る合計所得金額が1,000万円を超える場合には、この非課税制度の適用を受けることができません (平成31年4月1日以後に取得する信託受益権または金銭等に係る贈与税について適用されます。)。 |
孫に相続させたい場合に税理士に相談すべき理由とは?
孫に相続させたい場合に税理士に相談すべき理由は、以下の3つです。
- スムーズに相続できる
- 最適な手段を提案してくれる
- 遺言書作成のサポートを受けられる
スムーズに相続できる
孫に相続させたい場合に税理士に相談すべき理由の一つに、スムーズに孫に相続できることが挙げられます。
税理士に事前に孫に相続させたい場合にはどのような方法が考えられるのかを相談しておくことで、スムーズに孫に相続できる方法を提案してもらうことが可能です。
特に、孫の場合は法定相続人ではないので孫に直接相続させようと思うと、被相続人が生きているうちから準備をしていかなくてはいけない部分が多いです。
そのような背景もあり早いうちに税理士に相談することができれば、最適な方法で孫に対して相続できる可能性が高いと言えます。
最適な手段を提案してくれる
孫に相続させたい場合に税理士に相談すべき理由の一つに、最適な手段を提案してくれることが挙げられます。
孫に相続させる場合、直接孫に相続させるためには孫を養子に迎える、もしくは遺言書を作成するということが挙げられます。
しかし、これだけではなく生命保険の受取人にすることで孫に対して実質的に相続させることも可能です。
このように孫に相続させると考えた場合、様々な方法を取ることができ、最終的に孫に財産を渡すという面では、さらに広い方法を考えることができます。
さまざまな手段があるなかで、税理士が過去の経験・知識をもとにどの方法が孫に相続させる、孫に資産を残すという上では有効になるのかを提案してくれるのは大きな魅力でしょう。
遺言書作成のサポートを受けられる
孫に相続させたい場合に税理士に相談すべき理由の一つに、遺言書作成のサポートを受けられることが挙げられます。
孫に相続させたい場合、孫は法定相続人ではないので遺言書を作成するのが一番有効な手段と言えるでしょう。
一方で遺言書を作成したところでその遺言書が形式に則ったものではないと判断されれば、遺言書としての効力を持つことがありません。
そのような背景もあり、遺言書作成のサポートを受けることができ、かつ効力の持つ遺言書を作成できる点は大きなメリットでしょう。
特に、遺言書の中でも法律違反や税務処理的にアウトなものが記載している場合、それらの内容が遺言書として認められる可能性は低いです。
このような背景もあり税務処理的に問題がないのかを確認してもらうという面でも、遺言書作成のサポートを受けられるというのは、税理士に相続税相談をするメリットのひとつです。
孫に相続させる際のデメリットとは?
孫に相続させる際のデメリットは、以下の3つです。
- 相続税額が割り増しになる
- 他の相続人との兼ね合いが必要になる
- スムーズに相続できない可能性がある
相続税額が割り増しになる
孫に相続させる際のデメリットの一つに、相続税額が割り増しになるということが挙げられます。
子供や配偶者以外などの法定相続人以外に対して相続する場合、相続税が2割増して加算されることになります。
そのため、孫に対して相続をする場合でも相続税額が割増になってしまうというのは大きなデメリットでしょう。
相続税額の割増については国税庁が以下のように発表しています。
相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人が、被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫(直系卑属)を含みます。)および配偶者以外の人である場合には、その人の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算されます。 |
◆相続税額の2割加算の対象となる人
※1被相続人の養子は、一親等の法定血族であることから、相続税額の2割加算の対象とはなりません。ただし、被相続人の養子となっている被相続人の孫は、被相続続人の子が相続開始前に死亡したときや相続権を失ったためその孫が代襲して相続人となっているときを除き、相続税額の2割加算の対象になります。
※2相続時精算課税適用者が相続開始の時において被相続人の一親等の血族に該当しない場合であっても、相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した時において被相続人の一親等の血族であったときは、その財産に対応する一定の相続税額については加算の対象になりません。
◆相続税額の2割加算の対象になる人
例えば、以下の方は相続税額の2割加算の対象になります。
- 被相続人から相続または遺贈により財産を取得した人で、被相続人の配偶者、父母、子ではない人(例示:被相続人の兄弟姉妹や、おい、めいとして相続人となった人)
- 被相続人の養子として相続人となった人で、その被相続人の孫でもある人のうち、代襲相続人にはなっていない人
◆計算方法・計算式
相続税額の2割加算が行われる場合の加算金額 = 各人の税額控除前の相続税額×0.2
ただし、相続時精算課税に係る贈与を受けている人で、かつ、相続開始の時までに被相続人との続柄に変更(養子縁組の解消等)がある場合は、計算が異なります。
他の相続人との兼ね合いが必要になる
孫に相続させる際のデメリットの一つに、他の相続人との兼ね合いが必要になることが挙げられます。
孫に相続させたいと思っていても、一人の孫にだけ相続させる場合、他の孫が相続に対して異議を唱える可能性もあります。
また、法定相続人が異議を唱える可能性もあるでしょう。
被相続人に子供が3人いて、その3人の子供のがそれぞれ3人の子供がおり、合計9人の孫がいる状態の中で一人の孫に対して、遺産を多く相続するなどの手段を取ってしまうと、親族間のトラブルになってしまう可能性も十分考えられます。
そのような背景もあり、他の相続人との兼ね合いが必要になるというのは大きなデメリットでしょう。
スムーズに相続できない可能性がある
孫に相続させる際のデメリットの一つに、スムーズに相続できない可能性があるということが挙げられます。
孫に相続させる場合、直接相続させることはできず孫を養子にする、もしくは遺言書に孫に相続させる旨を記載することが方法として考えられます。
しかし、孫に相続させることで相続人の間でトラブルになる可能性もあり、遺産相続調停が開催される可能性もあります。
遺産相続調停が開設された場合、遺産をスムーズに受け取ることが難しいです。
このような背景もありスムーズに相続できる可能性が低くなるというのは、孫に相続させる上でのデメリットの一つと言えます。
一方で、他の相続人と事前に合意が取れており、遺言書の内容についても事前に相続人の間で合意を得ることができていれば、被相続人の死後スムーズに孫に対して相続できる可能性は高いです。
まとめ
相続は、相続専門の税理士に依頼することでスムーズに、そして適切に申告をすることが可能です。
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