自筆証書遺言について知りたい人に向けて、この記事では自筆証書遺言や自筆証書遺言を記載する際の5つの要件について紹介します。
それでは、見ていきましょう。
自筆証書遺言とは?
自筆証書遺言は、遺言者が自筆で作成する遺言書で様式等は決められていますが、公正証書遺言よりも気軽に作成できるのが特徴です。
自筆証書遺言を記載する際の5つの要件
自筆証書遺言を記載する際の要件は、以下の通りです。
- 遺言者本人が自筆で全文を記載する
- 作成日を記載する
- 氏名を記載する
- 押印をする
- 所定の訂正方式で訂正している
遺言者本人が自筆で全文を記載する
自筆証書遺言は、遺言者本人が自筆で全文を記載することが必要です。
自筆証書遺言は、自筆証書という名前からわかる通り全文を自筆で記載すると自筆証書遺言として認められます。
そのため、口頭で話したことを代理人が代わりに文字起こしした場合は自筆証書遺言として認められません。
パソコンなどでテキストで記載したものについても、自筆ではないので自筆証書遺言としては認められません。
作成日を記載する
自筆証書遺言は、作成日を自筆証書遺言内に明記する必要があります。
作成は、西暦と月日がわかる形であれば自筆証書遺言として認められないという可能性は低いです。
そのため、必ず明確に「◯◯年◯月◯日」と書くようにしましょう。
自筆証書遺言の内容を更新した場合は、更新した日時を自筆証書遺言に記載することで、最新の日付のものが自筆証書遺言として認められることになります。
氏名を記載する
自筆証書遺言は、氏名を記載する必要があります。
自筆証書遺言に自分の氏名を入れていない場合、自筆証書遺言としての要件を満たしていないと判断されて、自筆証書遺言として死後認められない可能性もあります。
押印をする
自筆証書遺言では、押印をする必要があります。
押印がない場合は、自筆証書遺言としての要件を満たしていないので、自筆証書遺言としては認められません。
また、自筆証書遺言は長期間保存される可能性も高いので、なるべく時間が経過しても自筆証書遺言内に押印が残るしっかりした印鑑を利用するのがおすすめです。
所定の訂正方式で訂正している
自筆証書遺言は、所定の訂正方式で訂正していることが求められます。
自筆証書遺言を作成する際に、修正箇所が生じた場合は、訂正印をつけた上で訂正内容を明記して署名・押印が必要です。
訂正の方式が異なる場合は、自筆証書遺言として認められない可能性もあります。
また、自筆証書遺言で修正が生じた場合は、トラブルや自筆証書遺言として認められない可能性を排除するためにも、もう一度最初から書き直した方がよいでしょう。
自筆証書遺言書保管制度とは?
自筆証書遺言書保管制度は、法務省によると以下の通りです。
①あなたの遺言書は、法務局において適正に管理・保管されます!
遺言書の保管申請時には、民法の定める自筆証書遺言の形式に適合するかについて、遺言書保管官の外形的なチェックが受けられます。
遺言書は、原本に加え、画像データとしても長期間適正に管理されます。(原本:遺言者死亡後50年間、画像データ:同150年間)
そのため、
▶遺言書の紛失・亡失のおそれがありません。
▶相続人等の利害関係者による遺言書の破棄、隠匿、改ざん等を防ぐことができます。
<注意事項>
※遺言の内容について相談に応じることはできません。
※本制度は、保管された遺言書の有効性を保証するものではありません。
②相続開始後、家庭裁判所における検認が不要です!
③相続開始後、相続人等の方々は、法務局において遺言書を閲覧したり、遺言書情報証明書の交付が受けられます!
データでも管理しているため、遺言書の原本が保管されている遺言書保管所にかかわらず、全国どこの法務局においても、データによる遺言書の閲覧や、遺言書情報証明書の交付が受けられます!(遺言書の原本は、原本を保管している遺言書保管所においてしか閲覧できません。)
④通知が届きます!
▶関係遺言書保管通知
相続人のうちのどなたか一人が、遺言書保管所において遺言書の閲覧をしたり、遺言書情報証明書の交付を受けた場合、その他の相続人全員に対して、遺言書保管所に関係する遺言書が保管されている旨のお知らせが届きます!
▶指定者通知
遺言者があらかじめこの通知を希望している場合、その通知対象とされた方(遺言者1名につき、お一人のみ)に対しては、遺言書保管所において、法務局の戸籍担当部局との連携により遺言者の死亡の事実が確認できた時に、相続人等の方々の閲覧等を待たずに、遺言書保管所に関係する遺言書が保管されている旨のお知らせが届きます!
自筆証書遺言のデメリットとは?
自筆証書遺言のデメリットは、以下の通りです。
- 遺言書として無効になる可能性がある
- 自筆証書遺言を巡り相続人の間でトラブルになる可能性がある
- 紛失リスクがある
- 改変されるリスクがある
- 検認が必要になる
遺言書として無効になる可能性がある
自筆証書遺言のデメリットの一つに、遺言書として無効になってしまう可能性があるということが挙げられます。
自筆証書遺言の場合、決められた方式に則って作成していないと遺言書として無効になってしまう可能性があります。
この場合、せっかく遺言書として書いたにも関わらず遺言書として認められないので、自筆証書遺言書をもとに相続人に対して相続をすることが不可能になります。
自筆証書遺言を巡り相続人の間でトラブルになる可能性がある
自筆証書遺言のデメリットの一つに、自筆証書遺言をめぐり相続人の間でトラブルになる可能性があるということが挙げられます。
自筆証書遺言は被相続人が自分の意思で作成することができる書類でありますが、書類作成において相続人等が立ち会っていないと被相続人の意思で書かれたものなのかを判断するのが難しいというのも事実です。
そのため、自筆証書遺言をめぐり相続人の間でトラブルになる可能性があるというのも大きなデメリットです。
公正証書遺言の場合は公証人の前で作成し、第三者が確認のもとに作成されているという背景から相続人の中で遺言書の内容や作成背景をめぐりトラブルになるという可能性は少ないです。
一方で、自筆証書遺言の場合はクローズドの場で書かれていることもあり、内容や本当に被相続人の意思で書かれたものなのかを判断することが難しく、トラブルになる可能性も十分考えられます。
紛失リスクがある
自筆証書遺言のデメリットの一つに、紛失リスクがあるということが挙げられます。
自筆証書遺言は、基本的に自分で保管しておく必要があり、かつ相続人たちは被相続人が自筆証書遺言を作成していることを知った上で、自筆証書遺言を探し出さないと遺言書として認められません。
このような背景から自筆証書遺言自体に紛失のリスクが高いだけではなく、自筆証書遺言が見つけられない可能性があるというのも大きなデメリットです。
改変されるリスクがある
自筆証書遺言のデメリットの一つに、改変されるリスクが否定できないということが挙げられます。
自筆証書遺言は自分で保管することができ、作成においてもハードルが低いのが事実です。
ハードルの低さがメリットになるのも事実ですが、一方で自筆証書遺言の場合は自筆で作成していることもあり改変されるリスクがあり、改変を見抜けない可能性があるというのも大きなデメリットです。
このような背景から自筆証書遺言は遺言書としての効力を持ちにくいというのも事実です。
実際に、公正証書遺言と比較すると自筆証書遺言は遺言書として認められる可能性が低くなっています。
この背景から改変リスクがあり、かつ自筆証書遺言の改変を相続人たちが見抜けない可能性があるというのは大きなデメリットでしょう 。
検認が必要になる
自筆証書遺言のデメリットの一つに、検認が必要になることが挙げられます。
裁判所によると検認の概要は、以下の通りです。
遺言書の保管者又はこれを発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その「検認」を請求しなければなりません。
なお、公正証書による遺言のほか、法務局において保管されている自筆証書遺言※に関して交付される「遺言書情報証明書」は、検認の必要はありません。
「検認」とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
検認の手続は、通常は以下のように行われます。
①検認の申立てがあると、相続人に対し、裁判所から検認期日(検認を行う日)の通知をします。申立人以外の相続人が検認期日に出席するかどうかは、各人の判断に任されており、全員がそろわなくても検認手続は行われます(申立人には、遺言書、申立人の印鑑、そのほか担当者から指示されたものを持参していただくことになります。)。 ②検認期日には、申立人から遺言書を提出していただき、出席した相続人等の立会のもと、裁判官は、封がされた遺言書については開封の上、遺言書を検認します(封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならないことになっています。)。 ③検認が終わった後は、遺言の執行をするためには、遺言書に検認済証明書が付いていることが必要となるので、検認済証明書の申請(遺言書1通につき150円分の収入印紙と申立人の印鑑が必要となります。)をすることになります。 |
自筆証書遺言のメリットとは?
自筆証書遺言のメリットは、以下のものです。
- 簡単に作成できる
- 遺言書保管制度がある
簡単に作成できる
自筆証書遺言のメリットの一つに、簡単に作成できることが挙げられます。
自筆証書遺言は公正証書遺言よりも気軽に作成することができ、自筆できるのが大きなメリットです。
このため亡くなる直前に、自分の意思を託したいと思っている場合は、自筆証書遺言を作成することで、自分の意思を残せる可能性も高いです。
遺言書保管制度がある
自筆証書遺言のメリットの一つに、遺言書保管制度があり法務局において適正に管理・保管されることが挙げられます。
遺言書保管制度があることで、被相続人が亡くなったあとに相続人たちが自筆証書遺言の存在を知ることが可能です。
まとめ
相続は、相続専門の税理士に依頼することでスムーズに、そして適切に申告をすることが可能です。
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