不動産を相続する際にかかる税金について知りたい人に向けて、不動産を相続する際にかかる税金や相続した不動産をそのまま所有した時にかかる税金を紹介します。
それでは、見て行きましょう。
不動産相続時にかかる税金
不動産を相続するときにかかる税金は、以下のケースに分けて考えるのが有効です。
- 相続して名義変更をする時
- そのまま所有する時
- 売却する時
不動産の名義を変更する際にかかる税金は、以下の2つです。
- 相続税
- 登録免許税
相続した不動産を相続してそのまま所有した時にかかる税金は、「固定資産税」です。
相続した不動産を売却した時にかかる税金は、以下の3つです。
- 所得税
- 住民税
- 復興特別所得税
これらの税金は全て期限までに現金で納めなければいけません。
また、期限を過ぎると延滞税がかかるので注意しましょう。
不動産は高額な資産ですが、売却などして現金化するには時間がかかります。
そのため、不動産を相続して税金を支払うためには、予めそれなりの現金を手元に用意しておく必要があります。
では、それぞれの税金について詳しくみていきましょう。
不動産を相続した時にかかる税金
不動産を相続した時には、「相続税」と「登録免許税」がかかります。
相続税
相続税は、不動産だけでなく金銭や有価証券など、財産を相続した際に支払わなければいけない税金です。
相続税は、相続をした財産全ての合計金額から葬祭費や被相続人の負債などを返済した残りの金額を引いた分に対してかかります。
なお、相続税には基礎控除があり、相続の合計額が一定額以下の場合には税金を納める必要はありません。基礎控除の金額は相続人の人数によって変わります。
相続税の基礎控除額の計算方法は以下の通りです。
◆【3,000万円+600万円×相続人の人数=基礎控除額】
相続人が配偶者と子供1人の計2人だった場合、3,000万円+600万円×2=4,200万円となります。
相続した財産の総額が4,200万円未満であれば相続税は支払わなくて済みます。
相続税の申告が必要かどうかなど、国税庁のサイトにシミュレーションがあるので、活用してみてください。
相続税は、相続する資産が大きければ大きいほど高くなります。
また相続人が何人いるかによって取得金額も変わってくるのでかなり計算が複雑になることもあります。
現金や土地以外にも有価証券など複数の資産を相続しなければいけない、また相続人の人数が多くどう計算したらいいかわからないときには、相続に強い弁護士や司法書士などのプロに相談するのがベストです。
登録免許税
不動産を相続した時には、法務局にて名義変更が必要です。
この手続きを「相続登記」といい、相続登記の申請時に登録免許税がかかります。
なお、2024年4月1日から相続登記は義務化され、「相続の開始及び所有権を取得したことを知った日から3年以内」に相続登記をおこなわないと10万円以下の過料の対象となります。
そのまま所有するにも、売却をするにもどちらにしても必ず相続登記を忘れずにおこないましょう。
登録免許税の計算方法は、以下の通りです。
◆【課税評価額(固定資産税評価額の1,000円未満を切り捨てたもの)×0.4%】
固定資産税評価額は、「固定資産評価証明書」、もしくは毎年送られてくる「固定資産税課税明細書」に記載されている評価額、もしくは価格を使用します。
土地の評価額が20,789,456円、一戸建ての建物の評価額が20,123,456円だった不動産を相続した場合は、【20,789,456円+20,123,456円=40,912,912円】で1,000円未満を切り捨てた【40,912,000円】が課税評価額になります。
この課税評価額に0.4%をかけた【40,912,912円×0.4%=163,651円】の100円未満を切り捨てた「163,600円」が登録免許税です。
また、登録免許税の支払は、基本的には現金です。
登録免許税の額を銀行等に納付し、その領収書を申請書に貼り付けて提出します。
登録免許税が30,000円以下なら金額分の収入印紙を申請書に貼り付けて提出することも可能です。
マイナンバーカードとICカードリーダライタがあれば、オンライン申請も可能です。
その場合にはネットバンキングで支払えます。
相続した不動産をそのまま所有した時にかかる税金
相続した不動産が自宅だったり、また賃貸物件やオフィスビルだったりした場合は、そのまま所有することが多いでしょう。
相続した不動産を自分の名義として所有する場合には、「固定資産税」を毎年支払わなくてはなりません。
固定資産税
不動産を所有していると、毎年固定資産税がかかります。
固定資産税は「1月1日現在、土地、家屋及び償却資産の所有者として、固定資産課税台帳に登録されている人」に支払う義務があります。
固定資産税は毎年4月に納税通知書が発送され、一括払いと4期の分割両方の納付書が入っていて、どちらかを選ぶことが可能です。
被相続人が亡くなった時にすでに全て納税済みであれば問題ありませんが、もし未納分があれば、期限までに誰かが支払わないと期限の翌日から延滞金が発生してしまいます。
また、相続人が複数いてなかなか遺産分割協議に合意が出ない場合には相続登記を済ませるまで時間がかかるケースも多いです。
そのようなケースの場合、未納分の固定資産税は不動産の相続人となる可能性が高い人が支払うか、誰かがまず建て替えて、正式にその不動産の相続人が決まったら請求するのが一般的です。
1月1日までに正式に相続人が決まったら、翌年の固定資産税からはその相続人に支払い義務があります。
固定資産税の納税額の計算式は下記になります。
◆【固定資産税評価額×1.4%(税率)】
基本的に固定資産税の税率は1.4%ですが、各自治体によって異なる場合があるので事前に確認しておきましょう。
また、以下の場合は固定資産税が免税になります。
- 土地の評価額が30万円未満
- 建物の評価額が20万円未満
相続した不動産を売却した時にかかる税金
相続した不動産が空き地などあまり活用していない場合には、売却を検討する人もいると思います。
相続した不動産を売却した時には、「所得税」「住民税」「復興特別所得税」が課せられます。
販売価格からその不動産の取得費、そして仲介手数料や登記費用などの諸経費や減価償却を差し引くと、売却時の利益が出ます。
この利益分を「譲渡所得」といい、この金額に対して税率がかけられます。
所得税、住民税の税率は、その不動産の取得年数によって変わります。
ただし、相続の場合は相続した日からではなく、譲り受ける前までの期間も含まれます。
所得年数が5年以内の場合は以下の通りです。
- 所得税 30%
- 住民税 9%
- 復興所得税 2.1%
合計 41.1%
所得年数が5年以上の場合は以下の通りです。
- 所得税 20%
- 住民税 5%
- 復興所得税 2.1%
合計 27.1%
このように、所得税、住民税の税率は5年経っているかどうかで2倍程度の差が生じます。
そのため、相続した段階で所有から5年以内であれば売却する時期については検討が必要です。
また、譲渡所得を出すには、不動産の取得費が必要です。
売買時の契約書があれば問題ないのですが、なかには古くから保有していた不動産で売買時の契約書が見つからない場合もあるでしょう。
不動産の取得費が分からない場合、売った金額の5%を取得費として計算する決まりがあります。
そのため、例えば相続した不動産が5,000万円で売れた場合、6,000万円で購入した契約書がある場合は、【5,000万円-6,000万円=-1,000万円】となり、利益が出ていないことになるため、税金はかかりません。
一方で、6,000万円で購入したと聞いたのに、契約書など証明できるものがない場合は、【5,000万円-(5,000万円×5%=250万円)=4,750万円】に対して税金がかかります。
このように、契約書があるのとないのでは大きな違いです。
そのため、できれば生前に契約書がないか確認すること、あるのであれば相続人にどこに保管しているのか教えておくこと、また、ない場合には仲介してくれた不動産屋に当時のチラシなどのデータが残っていないか、また不動産鑑定士に当時の金額を算出してもらうなど、合理的に証明する必要があります。
不動産を相続する際の節税対策とは?
不動産を相続する際の節税対策に小規模宅地等の特例の利用が挙げられます。
小規模宅地等の特例は、要件を満たしていると最大80%まで土地の評価額を下げられる制度で、概要は以下の通りです。
個人が、相続や遺贈によって取得した財産のうち、その相続開始の直前において被相続人または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族(以下「被相続人等」といいます。)の事業の用または居住の用に供されていた宅地等(土地または土地の上に存する権利をいいます。以下同じです。)のうち一定のものがある場合には、その宅地等のうち一定の面積までの部分(以下「小規模宅地等」といいます。)については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、下記の「減額される割合等」の表に掲げる区分ごとにそれぞれに掲げる割合を減額します。 なお、相続時精算課税に係る贈与によって取得した宅地等および「個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予及び免除」の適用を受けた特例事業受贈者に係る贈与者または「個人の事業用資産についての相続税の納税猶予及び免除」の適用を受ける特例事業相続人等に係る被相続人から相続または遺贈により取得した特定事業用宅地等については、この特例の適用を受けることはできません。 |
ただし、小規模宅地等の特例は、条件を満たしていれば自動的に適用になるものではありません。
そのため、小規模宅地等の特例を利用する際には管轄の税務署へ申告しなければいけないので、忘れないようにしましょう。
まとめ
相続は、相続専門の税理士に依頼することでスムーズに、そして適切に申告をすることが可能です。
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